組織再編の基本的な考え方

いわゆる組織再編は全て現物出資であると考えれば理解しやすい。
組織再編の形態として現物出資の他、合併、分割、株式交換、株式移転等があげられるが、合併にしろ、分割にしろ、負債を含む資産を他の会社に拠出し、その対価として株式の交付を受ける手続であるし、株式交換及び株式移転は当社の株式を拠出し他社の株式の交付を受ける手続きである。

【適格組織再編について】

ところで、法人税法上資産の移転があった場合には原則として課税関係が生ずるが、形式上資産移転があっても例えば支配関係が継続していて実質的には移転していないと認められるよう場合には課税を繰り延べることとなる。これが適格再編の基本的な考え方である

図1は完全親会社(100%出資)P社が完全子会社S社に資産を移転した場合の課税関係を示している。
P社が自社の資産(簿価200時価300)をS社に移転した場合、形式的にはP社純資産500が300へと減少することとなるが、実質的に見れば移転資産に相当するS社の株価が上昇するから時価純資産1000に異動はなく、これを現物出資とすれば適格現物出資として課税の繰り延べが行われることとなる。
この場合S社の増加純資産はA=200で純資産総額は700となり資本金等の額は300となる。

また、仮にP社が完全親会社でなく非適格合併である場合にはP社は300の資産を現物出資したことになるからS社ではA=300となり、純資産総額は800となる(資本金等の額は400)。
この時P社には課税関係が生ずる。
すなわち、簿価200と時価300との差額100について課税されることとなる。

ところで、当該移転資産が現物出資ではなく無償譲渡である場合はどうか…
この場合には時価300は贈与となるが、完全支配関係がある法人間での寄付金の損金不算入(法人税法37②)、受贈益の益金不算入(法人税法25の2)の規定により当該贈与について課税関係は生じない。また移転資産が譲渡調整資産(法人税法61の13)である場合には簿価200と時価300の差額100について譲渡益の課税が繰り延べられる。

この場合P社の時価B/Sについては適格組織再編と同様であるがS社B/Sは資本金等の額は100と変わらず利益積立金が300増加し700となる点が適格組織再編と異なる。

【法人税法22条2項への当てはめ】

1 非適格組織再編について

資本取引である非適格組織再編がなぜ課税されるのか、
図1の事例によればA資産(簿価200、時価300)を現物出資した場合には簿価200の資産を一旦S社へ時価300で売却し当該代金を出資に充てたと考えることになる。すなわち、売却という損益取引と出資という資本取引の複合取引であるから有償譲渡部分に課税されるのである。

2 完全支配グループ間無償譲渡について

無償譲渡も益金に算入されることとなるが、完全支配グループ間の贈与(法人税法25の2、37②)は22条2項前段の「別段の定め」に該当するから同項適用除外となる。
なお、図1でA資産が調整対象資産ではない場合には譲渡損益100について課税を受けることとなる。

【法人税法第22条第2項】

内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。

担当:岩田 健一郎

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